よくマネジメントの世界で取り上げられる、「物事を多面的に見る、物事を俯瞰的に(大局的に見る)、物事を本質的に見る」という考え方が、講師道にも当てはまります。私はオリジナルで “多面的・俯瞰的・本質的の三的” と呼んでいます。

【三的とは】


“三的” を講師の仕事に当てはめると、どのように考えられるかをまとめました。

①多面的:
今回の研修は、受講生にどのレベルまで教えるべきか、研修担当者は何を望んでいるか、研修テーマと企業の経営課題との関連はどうか、研修会社はそういったことを踏まえて講師に何を求めているか・・・複数の項目を同時に勘案しながら取り組むことが大切です。


マナー研修ひとつをとっても、その周辺には経営理念の徹底、顧客満足度の向上、サービス力の強化など、講師が把握しておくべき概念は多数存在し、その企業には「何のために、どのようなマナーが必要か」を考えながら講義する必要があります。

②俯瞰的(大局的):
上記の多面的な物の見方を果たすためには、1つ1つの物事を別々に見るのではなく、全体を真上から見てトータルで判断する姿勢が望ましいのです。

仮に、受講生は受講時間を短くして欲しいと望み、担当者は厳しく実施して欲しいと望み、企業は講師料を下げて欲しいと望み、研修会社はアンケート結果を良くして欲しいと望み・・・1つ1つの望みが矛盾した形で噴出することはよくありますが、講師は右往左往するのではなく、俯瞰しながらベストな姿勢や施策を模索し、決断する必要があります。


③本質的:
上記の俯瞰的な物の見方を果たすためには、枝葉末節にとらわれることなく、何のためにやるのか(目的)、どのレベルを目指すのか(ゴール)を常に考え習慣づけることが大切です。

故意であっても無意識であっても、研修の流れとは関係のない“どうでもいいこと”を突っついてくる受講生もいるでしょう。しかし、講師が本質さえ押さえていれば、枝葉末節を言ってくる人たちに毅然と本質を語ることができますし、たとえ一時的に感情的なもつれが発生したとしても、最終的には講師に対する信頼が増します。


こうした “三的” を講師自身で意識し、また受講生にも研修テーマにおいて何が本質かを考えさせることによって、受講生は真にスキルアップして研修内容を現場で活かしやすくなります。その結果、研修の価値や講師への評価を上げることにつながるのです。

「雙志館」では、講義において皆さんが “三的” で物事を考えていくよう常に求めますし、ご自身でも意識しながら受講していただきたいと思います。