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□ 講師道錬成道場『雙志館』通信 -2020年5月21日-

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■ワンポイント・エッセイ 心身を鍛える(3) 大嶋利佳

 空手指導者の間でよく出る話題があります。それは入門時に
「早く黒帯になるよう頑張ります!」と宣言する人ほどすぐに
やめてしまうということで、これを言うと皆さん「そうそう!」
と頷きます。
 「子供に習わせるついでに自分も」とか「運動不足が解消で
きればよい、黒帯など望まない」という程度のゆるい動機で始
めた人の方が長続きし、その結果、昇段できるというケースの
方が多いのです。
 「早く黒帯になりたい!」という目標を掲げ、意欲を示して
積極的に取り組むのは良い態度のはずなのに、なぜこういう結
果になってしまうのでしょうか。
 いろいろな理由が考えられますが、私は、早く黒帯になりた
がる人は、黒帯ではない自分に耐えられないからではないかと
思っています。
 黒帯になるには、少なくとも3年以上はかかるものです。そ
の間、目標を達成できていない、理想の自分とはほど遠い残念
な自分の姿を、道場でさらし続けなければなりません。
 「早く黒帯になりたい」とは、「残念な自分でいる期間をで
きるだけ短くしたい」という気持ちの表れだと言えます。それ
は一見やる気に満ちたよい姿勢のようですが、裏を返せば「長
い期間には耐えられない」という弱みがもうかがえる発言だと
も思われます。
 「早くなりたい!」という意欲よりも、「どんなに時間がか
かっても構わない」という覚悟の方が、人を強くするものでは
ないかと、私は空手の指導を通じて感じています。