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□ 講師道錬成道場『雙志館』通信 -2020年5月14日-

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■ワンポイント・エッセイ 心身を鍛える(2) 大嶋利佳

 私は空手の指導員をしています。主に大人の初心者を対象に指
導していますが、多くの人が入門するとき、こう不安を口にされ
ます。
「身体が硬いのですが、大丈夫でしょうか・・・?」
 これには必ず「大丈夫です、続けていればだんだんと柔軟性が
ついてきますから」とお答えしています。そして、「ただし、年
単位で考えてくださいね」と付け加えます。長い運動せず、年齢
を重ねるままに放っておいた硬い身体が、数回の稽古で柔らかく
なるはずがありません。しかし、週に1回程度であっても1年間
続ければ、必ず改善します。
 この「長期間続ける」ことに耐えられるかどうかが、心身を鍛
えるための大きなカギです。なにごとも、知識やスキル、能力を
身に着けるには時間がかかります。それは、言い換えれば「でき
ない自分に耐える」時間です。
 身体が硬いが大丈夫だろうか、という不安を抱えて入門した人
は、稽古のたびに自分の身体の硬さに直面しなければなりません。
それは当然、愉快なことではありませんから、多くの人が数回の
稽古でやめてしまいます。
 そのやめる理由を、誰もが仕事で忙しいせいにしたり、飽きっ
ぽいからと性格のせいにしたりします。しかし、それは表向きの
理由で、本当はできない自分に向き合うことに耐えられないから
ではないでしょうか。
 「継続は力なり」という言葉があります。私は、以前はこの言
葉を「継続していれば、やがて力がつく」と解釈していましたが、
今は「継続すること、それ自体が力だ」という意味だと感じてい
ます。