■ワンポイント・エッセイ 自分で考える(5) 大嶋利佳

 自分で考えず、教えられたことを鵜呑みにする人は、受講者に
も多くみられます。
あるビジネスコミュニケーション研修のテキストに、例文の一部
として「お客様にはA案の方をお勧めいたします」という文章が
掲載されていました。するとこう指摘する受講生がいたのです。
 「別の研修で、ナニナニの方という表現は使ってはいけないと
習った。この文は間違っているのではないか」
 またこのようなこともありました。電話応対研修で、相手の用
件は復唱して確認する、あいまいな言葉は具体化したり別の表現
に言い換えたりして、より正確な伝達に努めること、と講義をし
たところ、受講生のひとりがこう言いました。
 「別の研修で、お客の言葉を復唱する際はそのまま繰り返すの
が大事だ、と習った。例えば、ご飯ください、と言われてライス
ですね、と言い返せばお客を不快にさせてしまう。言い換えるの
は失礼ではないか」
 いずれも、講師がある部分について説明したことを、自分で考
えず、適用できないケースにあてはめています。これは受講生の
考えが浅いと言えますが、一面的、表面的な説明で終わらせてし
まった講師の側にも、責任はあるでしょう。教える方も教わる方
も、自分で踏みこんで考える習慣がなければ、研修しても意味が
ありません。