■ワンポイント・エッセイ  自分で考える(2) 大嶋利佳

 研修講師の養成を行い、経験の浅い講師、志望者と接している
中でしばしば感じるのが、自分で考えない人の多さです。教わっ
たことを鵜呑みにし、それをうまく話すことが講義だと思い込ん
でいる人が少なくないようです。
 以前、ある講師志望者の模擬講義を聞いたときのことです。人
材育成がテーマで、その事例として高校野球チームの監督があげ
られていました。しかし、そのチームが優勝し監督が有名になっ
てから、その時すでに10年近くたっていたのです。これでは効
果的だとは言えません。
 講義後、「どうしてそんな古い事例を取り上げたのか」と質し
たところ「以前通った講師養成講座で習ったから」という答えが。
これには驚き、呆れました。
 自分で考える人なら「これはもう古い、新しい事例を探そう」
と工夫をするはずです。その程度のこともできない人が、講師に
なって人様から自分を「先生」と呼ばせようとするなど、勘違い
も甚だしいと私は思います。
 なにかを教えられたら鵜呑みにせず「本当にそうか」、「もっ
と別の考え方はないか」と疑ってみる。これが自分で考える第一
歩、そして、他人のモノマネではない自分の個性、特徴をもつ講
師になる第一歩です。