■ワンポイント・エッセイ
研修講師になるために(1)    大嶋 利佳

 今月から研修やセミナーの講師になりたい人のために、どうす
ればなれるのか、について書いていきます。前回、述べたように
講師になるためには何も試験や資格はありません。「私は講師で
す」と名乗ればいいのですから、自信をもってそう宣言できるよ
うになりましょう。
 そのためにはまず「何について講義、指導するのか」、つまり
自分の専門分野を明確にしてください。
 ここで注意してほしいのがあくまでも「専門分野」であって、
「なんとなく普通にできる、やったことがある」程度のものでは
ないことです。
 以前、私のところに「長く会社勤めをしていたので、名刺交換
や電話応対を新人に教えるくらいなら」と、講師を志願してこら
れた人がいました。試しにデモレッスンをして見せてもらいまし
たが、残念ながら無理、と言わざるを得ませんでした。「自分は
こうやってきた」「普通、こうするものだ」と説明するだけでは、
講義にも指導にもならないからです。
 「名刺交換」という単純で常識的なビジネス動作ひとつとって
も指導すべきポイントは多数あります。それを知り、整理し、自
分なりに深めてどんな質問にも答えられるようにし、そして実際
の動作を大勢に向かって手際よく指導できるようになっていなけ
れば、専門分野だとは言えません。
 どんな分野でも「やったことがある」「なんとなくできる」程
度では、人から先生と呼ばれるには値しません。
 「自分が自信をもって人に指導できる分野はなんなのか」「こ
の分野で、指導者と呼ばれるためには何が必要なのか」を真剣に
考えることが講師への第一歩となります。