■ワンポイント・エッセイ
     研修講師という仕事(2)  大嶋 利佳

 以前、SNS上に「あなたもセミナー講師になろう!」という怪し
げな広告がひんぱんに出てきたことがあります。その謳い文句に
よると、講師の仕事は「ほんの1、2時間話をするだけで」「高
額の報酬を得られ」さらには「日本全国を旅して温泉や郷土料理
を楽しむことができる」のだそうで、これには私も、同業の仲間
も呆れるばかりでした。
 しかし、これがすべて嘘だというわけではありません。表面的
に見ればその通りと言ってもいいでしょう。私も仕事で各地を回
り、短時間の講演をして、合間にその土地の名所、名物に触れる
機会をもったことは何度もあります。報酬も、主婦のパートやア
ルバイトの時給と比べれば格段に高いものです。なので、そこだ
けを見て「やりたい、なりたい」と思ってしまう人がいるのも無
理はないと思います。
 そして実際、なるのは簡単です。「私は講師です」と名乗って
人を集めたり、仕事を依頼してもらったりできれば、それでいい
のですから。講師になるには何の試験もありませんし、資格も要
りません。
 研修講師とは、そのようによく言えば自由、言い方を変えればい
い加減な職業です。それだけに講師の質は「玉石混交」です。立派
な人もいますが、「そんな乏しい知識やスキル、そんな卑しい人間
性で講師を名乗るとは」と、怒りすら覚えるような人にも、少なか
らず出会ってきました。講師になりたい人には、まずはそうした状
況の中で、いかに自分が「玉」の方になれるかを真剣に考え、取
り組んでほしいと、私は考えています。
 9月から講師になりたい人、講師としてさらに上を目指したい人
に向けて、具体的な取り組みについて書いていきます。