■ワンポイント・エッセイ
           強い言葉(1)   大嶋 利佳

 今月から、言葉の強さについて述べていきます。身体的にも
精神的にも、強い方がいいか、弱い方がいいか、と問われたら、
誰でも答えはひとつでしょう。「弱くなりたい、弱い人間だと
思われたい」と願う人はいないはすです。
 しかし、日ごろ周囲の人たちの言動に接していると、言葉で
自分を弱くし、弱く見せてしまっている人が少なからずいます。
 ひとつ例を挙げましょう。先月末、私は、今春入学した大学
院での第一回目の研究発表会に参加しました。私達1年生が研
究テーマについて教授や2年生の前で発表する会です。その中
に私と同世代の女性がいましたが、その人の話ぶりは気の毒な
ほど、弱々しいものでした。声が小さく、顔もうつむきがちで
したが、それだけではなく、自分の言うことをすぐに打ち消し
ながら、話を進めるのです。
「この哲学者について研究したいと思います。うまくできない
とは思うのですが・・・」
「この点を追究したいと思います。私には難しいだろうと思い
ますが・・・」。
 発言のほとんどすべてに、このような否定的、後ろ向きな言
葉が添えられていました。もし私が指導者であれば、研究以前
に「まず、その口のきき方をやめなさい」と厳しく注意するで
しょう。しかし、その場にいた人は教授を始め、誰もその点を
指摘した人はいませんでした。大学は話し方教室ではないので
当然でしょう。しかし、そのような発言を繰り返している人に、
よい研究ができるでしょうか。
 私はその様子を見て、「話し方は学業、研究活動にも影響を
与えるものだ」と痛感しました。ビジネスであればなおさらで
す。今月は改めて、この点について述べていきます。