■ワンポイント・エッセイ
  仕事と空手の日々(4)言葉では説明しきれません 大嶋利佳

 若い頃から空手を習い、得たものは多々ありますが、中でも
「なんでも言葉で説明できるわけではない」ということに早く気づ
けたのは、特に良かったと思っています。
 初心者の頃は身体をどう使い、どう動かすかを指導者から説明さ
れても、何を言われているのかよく分からないことが多々あります。
しかし、分からないなりに身体を動かし続けていると、いつか「あ、
こういうことか」と実感できる時が来るのです。
 スキルを身につけるには、この「分からなくてもやる」が大事で、
もし「分かるまで説明してください。分かったら行動します」など
と言っていたら、一生、できるようにはならないでしょう。
 私は、研修講師として主に論理的な書き方や話し方、説明力など
の指導を担当しています。その立場から、もちろん言葉を適切に用
いたコミュニケーションは重要だと言いたいです。しかし、「なん
でも言葉で説明できるわけではない」ということもまた、伝えなけ
ればならないと考えています。
 ここをわきまえない指導者は、長々と言葉を連ねて相手をうんざ
りさせたり、「いくら説明されてもできない」と自信を失わせたり
します。「できないのは説明が悪いせいだ」という口実を与えてし
まうこともあります。
 言葉を尽くして説明する指導と、理屈抜きで行動させる指導の両
方があってこそ、スキルは身につきます。