■ワンポイント・エッセイ
講師に求められる仮説力と質問力(その5) 占部 正尚

 講師が受講生に対し物事の本質を見据えた講義をすることは、
選ばれ続けるための最大の要因といえます。例えば、顧客志向
の重要性に関する講義の際に、受講生から「“モンスター”に
は、顧客志向は必要ありませんよね」という意見が出た場合、
どのように対処すべきでしょうか。
 企業の理念・方針に関することで、受講生の理解に不十分な
点や誤解が見られた際は、講師は逃げずに腰を据えて、きちん
と本質を踏まえた説明をすべきです。
 まずは多面的に「モンスターは、当社に具体的な要求事項が
有るのか、無いのか」、「当社に非が有るのか、無いのか」な
ど、場面設定に関する仮説の方向性を考えることが大切です。
 さらに、受講生に関しても「本気でそのように考えているの
か、単なる興味本位か」、「腹の立った経験が有るのか、無い
のか」と仮説につなげることも必要でしょう。
 その上で、モンスターを切り捨てるのではなく、出現した原
因を分析し、当社の味方になってもらう戦略を立てることこそ
が顧客志向を深める本質であると、俯瞰的な立場から理解させ
るべきです。
 そのためには、仮説の検証に必要な“質問”を受講生へ投げ
かけ、論点を明確にすることが重要です。次回は、講師の説得
力を増す“質問力”について解説します。